九州列車旅 博多駅-大分駅: 4page | トモレンズ旅本

そして甲板の人々は、思い思いに過ごした。



輝ける白い粒に目を細めた。



助けたいという思いは、
全ての人間に備わった機能。



海は人間を生んでくれた親なのだから、
時として理不尽な思いもするけれど、
多くの時間は感謝しています。



やがて日は沈む。
それは何億年も繰り返されて来た儀式。



辛い事があったらフェリーに乗って夕日を見ればよい。
苦しい記憶は逆光で見えないし、
悲しい声は波の音で聞こえない。



消えゆく一日が放つ、
最後の魔法。



全てを黄金色に染め上げて、
太陽はこの地を出て行った。



月に追われるようにフェリーは進む。



再び私たちが来る事を、あなたは望んでいますか。



月と夕日を背に、船は東へと進む。
誰もいない海を抜け、
次の新しい世界、松山に向かって。



あとがき 九州列車旅 博多駅ー大分駅

 

「電車」と「列車」では心への響き方が違うかと思う。
「汽車」だったらもっと違うかもしれない。
同じ移動機関なのに言い方だけでこうも違ってくるのは、
この乗り物と共に歩んだ、歴史と思い出があるからだろう。
 
博多駅から大分駅へは、まさに「列車」旅と呼ぶのにふさわしい時間だった。
駅で買ったお弁当を食べながら、流れる豊前の町並みを眺めていると、
その昔、母と電車で登山にいった時の、車内がよみがえる。
あの時の手作り弁当は美味しかったなとか、
父は仕事で来れなかったのが少しさびしかったなとか、
今はもう、母はあの山には登れないだろうとか、
様々な思いが交錯しては、景色とともに後方へ流れてゆく。
 
普段は思い出しもしない過去が、旅という非日常の助けを借りて
ノスタルジックに蘇らせてくれるのが、列車旅だ。
 
やがて青い、瀬戸内海が見えた。
列車はレールの上を進み続ける。
様々な人と、思い出を乗せて。
 
 
 
――― 九州列車旅 博多駅ー大分駅 全48ページ 完