高速で過ぎ去る様々な町たち。
その一つ一つに人生があり歳月がある。
やがて車内は青い光に包まれた。
忙しくパソコンを操るビジネスマンも、
初めて遠くに目を向けた。
ソニックは終点に停車した。
大分ははたしてどんな街なのだろう。
旅は高鳴る胸を呼び起こす。
空が抜け南国を思わせる大分駅前。
さあ、あてもなく歩いてみよう。
今日も僕たちの多くは、お互いを知らず、
知らない街で生きている。
神々しい光が降り注ぐ、
大分の商店街。
歩いてみよう。
その街に暮らす事を妄想して歩く。
喫茶店、本屋、八百屋、クリーニング屋、
なんだか、わくわくしませんか。
暖かな気候の中、大分駅のホームで背伸びをした。
涙が出て来たのは、あくびのせいだ。
「あの列車に乗ったらどこに行くのだろう」
少年の頃によく浮かんだ心の声は、
大人になるにつれ、遠く聞こえなくなっていった。